【 木のはなし 〜 エゾヤマザクラ② 】

【 木のはなし 〜 エゾヤマザクラ② 】

木工作家 斉藤綾子のひとりごと。

今月は、桜の木に対する日本人の特別な感情について考えてみたいと思います。以前、こんな噂を耳にしたことがあります。

『キコリは桜の木を伐りたがらないらしい』
このことについて、町内のきこりの方に尋ねたところ、「材にしても特別な高値が付く樹種ではないし、山で花を咲かせて、綺麗な姿を愛でる方が価値があると思うから、かなぁ」と教えてくれました。
植林した木の生育をよくするために、その他の木を除伐する時も、サクラを伐らないようにしているそうです。
桜の木を伐ることが嫌だということではなく、何となく、伐らずに残しておきたいという気持ちが働くそうです。
多くの方、特に日本人は、少なからず桜という木に対して親近感や好感を持っており、そのことについて、無条件に納得してしまうのではないかと思います。
それがどうしてなのかと気にかかり、インターネットや文献をいろいろ読んでいたところ、どうやらその容姿と咲き方に、その由縁があると感じました。

桜の木は、冬に耐え忍び、蓄えた力を、春の訪れを告げるように、力いっぱいに華やかな花を咲かせ、数日の後にさっと散り落とし、葉の展葉に力を注ぎます。それが日本人の精神性や美徳感と合致しているようです。
そもそも、武士道や諸行無常の精神に美徳を感じるというのは、日本人独特の感性であるといわれることがあります。

華やかで愛らしい容姿とは裏腹な、力強く潔い、男前な生き様(咲き方)に、特別な魅力を感じてしまうのは、民族性の証かもしれません。


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